漆黒の宇宙。 この瞬間にも星は生まれ、星は死に行く。 脈動する無限に広がる大宇宙は全ての生を受け入れ、その腕に抱き続ける。 人の生命の輝きも星の大きな輝きも全ては生命あるもの。 最後は母なる宇宙にその身を委ねてゆく。 それまでは、気高く誇らしく光り輝きを放ち続けたい。 消え落ちる最後の一瞬、その一生を宇宙に刻み付けるように。 「あ、流れ星♪」 その声にジョウは足を止め振り向いた。 宇宙ステーションの大きなウィンドウ越しに、一筋の瞬きを漆黒の宇宙に残し光が消える。 「また流れないかしら?」 アルフィンの青い瞳が煌き、嬉しそうな表情で宇宙を見上げた。 「さぁな」 無邪気なその笑みにジョウは素っ気無く返答した。 宇宙港とステーションを結ぶ連絡チューブは、透過処理をしているので宇宙の中にいるように感じる。 背後ではそんな二人を横目で見ながら乗降客が往来していた。 「ジョウは願いごとないの?」 「願いごと?」 「流れ星には願いごとをするのが当たり前じゃない」 胸を張って言い切るアルフィンにジョウは一瞬呆気にとられた。 彼女は幼い頃に教わった他愛無いおまじないを素直に信じているらしい。 でも、すぐに笑いながら手に持った書類でジョウはアルフィンの頭を軽く叩いた。 「分かった、分かった」 「それ本当に分かっているの?」 頭を叩かれて剥れた金毛色の雌猫は、青く輝く宝玉を真っ直ぐにジョウに向ける。 「分かっている。次を待たなくてもいつでも見られるさ」 ジョウはそう言って先を急ぐように目的の方向へ身体を向けた。 クライアントとの待ち合わせは余裕を持っているが、それでも遅れるわけにはいかない。 歩き始めると後を追うアルフィンがするりとジョウの左腕を取った。 「じゃあ、教えてよ。何処で見られるのか?」 身を寄せてしなやかな肢体を押し付けてくる。 人の気も知らないというか無意識の行動なのでどうこう言えないが、そういう不意打ちは結構焦るのだ。 「ほ、本当に分からないのか、アルフィン」 「ジョウのイジワル。もったいぶらないで教えてくれてもいいでしょ」 少々上擦った声に臆することなくアルフィンはジョウに食い下がった。 仕方なく歩みを止め、小さく溜息をつくとボソリとアルフィンの耳元で呟く。 「帰って”ミネルバ”の垂直尾翼を見るんだな」 そのままアルフィンの腕を外し、ジョウは少し急ぎ気味に歩を進めた。 “ミネルバ”の垂直尾翼・・・・。 そこにあるのは、流星マークに”J”の文字。 「あ?」 やっとジョウの真意に気が付いて、アルフィンはクスリと笑った。 クラッシャーは自分たち自身が流星なのだ。 願いごとをするのではなく、叶えるために今日も宇宙を駆け巡る。 「ジョーウ!」 呼ばれて振り返るジョウにアルフィンは駆け出して逞しい胸に飛び込んだ。 「うわっ、な、こん・・な」 周囲の目も憚らず抱きついてくるアルフィンに、思わずジョウは真っ赤な顔を晒してしまった。 「じゃ、ジョウはあたしの願いごと叶えてくれる?」 満面の笑みを浮かべてアルフィンは上目遣いにジョウを見た。 照れて必死にアルフィンを剥がそうとするジョウにはそれ所ではない。 そそくさとその場を離れようとする。 「返事聞いてないわよ」 逃すものかとアルフィンは素早くジョウの前に回りこんだ。 「・・・アルフィン次第だ」 聞こえるか聞こえないかの小声にアルフィンが一歩近づく。 「何?何言ったの?」 「仕事が先!」 そう言ってジョウはグイとアルフィンの腕を掴んで先に走り出した。 いきなり駆け出すジョウに必死について行く。 「もう、ジョウったらぁ」 叫ぶアルフィンを他所に、雑踏へ青と赤のクラッシュジャケットが飲み込まれていった。 願いを叶える流れ星。 輝いて瞬いてそして闇の狭間に落ち行く。 尾を引いて見える光の筋はその光の穂先が消え行く最後の瞬間まで願いを叶え続けるだろう。 クラッシャーという名の流星達は。 初めの抒情詩のようなくだりなど、幻想的で私はとても好きなのです。 そして微笑ましくも爽やかな二人vさて、姫の願い事は叶うのでしょうか? この煌くようなSSはEtarnal Forestの管理人*璃鈴様からいただきました。 ☆本当にありがとうございました!☆ |
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